nevertheless

それにもかかわらず、好きなものを好きと叫ぶだけ

【訳】ATEEZ ZERO:FEVER Part.3 Diary verストーリー

FEVERシリーズのPart.3ついに出ました。ATEEZの物語はどう進んだのか、そして次はどうなるのか。まだまだ気になるところが詰まっているのでその1%だけでも知りたい。そんな思いで今回も訳しました。(意訳あり)

過去ストーリー

nadegatanbi.hatenablog.jp

nadegatanbi.hatenablog.jp


INTRO

第4次産業革命以降、科学技術が急速に発展し、平均寿命が200歳まで延長された。寿命が延長されることによって正規学習過程が40年に延長された。 単純に世界を理解するための基本知識を習得するのにはそれだけの時間がかかる。

中央政府はAIシステムを通して全ての物事を効率的かつ予測可能にして理想的な社会を作ることにした。

全ての予想外の出来事*1を取り除く、「一括統制政策」を進めるということだ。

AIシステムは全ての予想外の出来事を計算し、政策はこれを通じて社会統制が可能だったが、ただ一つ、人間の感情は計算が不可能だった。

新しい予想外の出来事をバグと判断したAIはディープラーニングで測定不可能だと思っていた個々人のエネルギーを計算して取引まで可能な新しいマーケットプラットフォームを作り出した。

芸術分野の全面禁止、さらに新エネルギー取引システムまでも全て統制することで人間の感性、感情、自由意志が次第に薄れ、全人類がシステム維持のための部品程度に転落してしまった。

01 JONGHO

審判が試合再開を告げた。

相手チームに渡ったボールを仲間が奪い、僕にパスし、僕は華麗なドリブルと一緒にコートを横切った。ブロックを避けてレイアップシュートをした。ボールがリングを通過した!逆転だ!

興奮した気持ちで着地すると突然コートの床が目の前に迫ってきた。

足首を挫いたか?頭が真っ白になった。

床に着く直前に誰かが僕の腕を掴んだ。

「ジョンホ!」

聞き慣れた声だ。お馴染みの声。誰だ?光に目が慣れると僕の腕を掴んだその姿が見えた。医者だった。医者はゆっくりと口を開いた。

僕の足首について。日常生活には問題ないがバスケは出来ないといった。仲間たちは残念な視線だけ残したまま離れていった。僕を掴んでいる医者の手を振り払いながら遠ざかる仲間たちに向かって叫んだ。

頼むから僕を連れていって!どうか僕を捨てないで! 僕はさらに激しくもがいた。

その時もう一度 「ジョンホ! チェジョンホ!」

医者の顔の向こうにヨサン兄さんの顔がうっすら見えた。 兄さんは空いている腕を伸ばして僕の腕をしっかりと掴んだ。混乱して身悶えが治った。

ヨサン兄さんは僕を引き上げ、防毒マスクを勢いよく被せてくれた。何度か深呼吸をした後、周辺がはっきりと現れた。

僕たちは崖の近くに座り込んでいた。

言葉では言い表せない表情でヨサン兄さんを眺めた。兄さんはグライムズ少女の声を見つけたと言って僕の手を掴んだ。そして温かく笑いながら言った。

「ここを出よう」

02 YUNHO

レフトアイが振り回したバットは間一髪僕を外れ、捨てられたガラス窓に当たった。 割れたガラスの破片があっちこっちに飛び散った。僕は微動だにせず彼を見た。

そうするほどに彼はもっと頑なにバットを振り回した。バットに当たったものは無惨に砕けて割れた。

そして僕は彼に向かってゆっくり近づいた。

メンバーたちが僕を引き止める声が聞こえる。しかし妙な哀れみが、哀れみを超えたある感情が、恐れをなくし僕を彼の前に立たせた。

レフトアイはバットをまだ握りしめていたが、瞳は揺れていた。

幻覚症状がある程度消えたような目つきが感じられた。

「あなたの過ちではありません」

ストンと床に落ちたバットと一緒に糸が切れた人形のようにレフトアイも座り込んだ。

「初めから誰かを傷つける気などなかったでしょう」 彼は悲しそうな目をして涙を流した。これまでずっと隠し続けていた感情とともに。 彼は娘を亡くしたその日から何度も自責の念に駆られたことだろう。

もしもあの日にあそこへ送らなければ、もしも私が一緒にいたら、もしも、もしも…

僕は彼を見て、まるで鏡の前に裸で立っているような気分だった。

03 MINGI

「あの少年たちが黒い海賊団を救ってくれるだろう」

アンドロイドガーディアンのバンカーへ向かう海の上でメンバーたちは眠り、僕は少しの間船の甲板に出た。グライムズ少年の自信に満ち溢れた声が聞こえる。プレッシャーのある会話に口を挟みたくなくて静かに身を隠した。

彼らはレフトアイの娘が踊っている動画を見ながら、心から思い切り笑って歌っていた時代を懐かしんでいた。黒い海賊団を救出すればそんな日がいつか訪れるだろう、とお互いを慰め合った。

「海を見て」 声を取り戻したグライムズ少女が小さく叫んだ。夕暮れの空の色に似てオレンジ色を纏った海がうねっていた。綺麗だった。

「これを逃して生きてきた。」レフトアイが言った。 過ぎた過去に目隠ししたままもがいていたと。

彼らはしばらく黙って海を見つめていた。全ての心配事が消えたようにグライムズ姉弟は歌を口ずさみ始めた。口ずさんでいた歌は少しずつ大きくなり、レフトアイは悪戯っぽく踊った。可笑しかっただけど愛らしいダンスだった。

僕も思わず小さく笑った。

風は穏やかに吹いて僕の頭をくすぐった。海は宝石を抱えたように輝いていた。いつの間にかレフトアイとグライムズ姉弟は歌を歌いながら一緒にダンスをしていた。

誰かが言っていた。踊るということは人生に対する意志がほんの少しでもあるということだ。だから絶望の前でも踊ると。

そうだ、僕もいつも逃げて生きていたかもしれないな。不幸に囚われて現在を、今を見てなかった。 絶望の陽は地平線の向こうに姿を隠し、希望の星が空に浮かんでいた。爛漫としたオレンジ色の光は消え、海は次第に星を纏い始めていた。

04 WOOYOUNG

翌日の午後遅くに島に到着した。 沈んだ午後の日差しの間にペンションとサンベッドが散らばっていた。浜辺の砂の上に足を踏み出すとポカポカと熱が上がってきた。一時は「休養の島」という異名を持つ島だったが休息と旅行が時間の無駄遣いとなった今では誰も住まない無人島になったという。

迅速な脱出のためにグライムズ姉弟、レフトアイは船に残り、僕らは島に降りてアンドロイドガーディアンのバンカーがありそうな場所を探した。 意外にもバンカーを見つけるのは難しくなかった。

生命の痕跡が消えたこの島で慣れた黄色の煙を絶えず吐き出すところは一ヶ所だった。到着するとそこは島の真ん中に位置する美術館だった。

美術館だなんて。全ての芸術活動を禁止させた彼らが美術館を自分たちのバンカーにするなんて。

僕らはがらんとした美術館のロビーを通り、展示場の方へ歩いた。展示動線を案内する矢印が示す方から黄色い煙が出ていた。 煙の幻覚症状を楽しんでいたアンドロイドガーディアン何人かが床にぐったりしていた。そしてその最後には黒いフェドラの男たちがガラスの監獄に閉じ込められていた。

05 HONGJOONG

煙の中を横切りながら到着したところには彼がいた。いや、より正確に言えば彼らがいた。僕らが夢の中で出会った黒いフェドラの男たち。一人だけが壁にもたれて、かろうじて持ち堪えていた。 直感的に彼らを救わなければいけないと思った。

ドンッ!とガラスの壁に体当たりをした。微動だにしなかった。 もう一度体当たりをした。ドンッ!その音で壁に寄りかかっていた男が顔を上げた。

「やっと来たな。」 彼はなんとか手を伸ばしてつけているマスクを外した。彼の顔を見るや否や僕はそのまま固まった。彼は僕だった。僕と同じ顔をしていた。

「よく聞け、私たちが君達をここに呼んだ。」 もはや信じられないことの連続ではあったが、僕と同じ顔をしている者と向き合っているこのとんでもない状況に僕は首を横に振った。

「私たちはここに捕まっているから、誰かが私たちの仕事を引き継いでくれなければならない。ここまで来て感じただろうがこの世界には変化が必要だ。」

「なんで僕たちなんですか?なんで同じ顔なんですか?」 僕は彼の言葉に質問しながらガラスの壁に体当たりを続けた。ぶつかってぶつかってぶつかってみてもガラスの壁は割れる気配がなかった。

「今全てを話す時間はない。煙がもっと薄くなったらガーディアン達に見つかるだろう。一旦このようにしてみて。」 そして彼は僕らみんなにガラスの壁に手のひらを当てるように言った。僕らは彼の指示通りにガラスの壁に手を当てた。彼も手を伸ばして反対側のガラスに手のひらを当てた。

「誰もが壁にぶつかる。初めから壁など無かったらなんでも幸せだと思うが、簡単に手に入れられるものは簡単に失うんだ。」 禅問答のような彼の言葉に僕らは顔を見合わせた。

同じ顔の男達、今まで経験した信じられないこと、この世界に対する果てしない疑問と理解できない頭の中と関係なく、何か熱い黒い光のエネルギーが僕らを包み込んだ。

黒い光が消えるにつれ、彼らのブラックスーツが僕らに着せられていた。

06 SAN

呆気にとられたまま黒い海賊団のブラックスーツを調べていると、ガラスの壁の向こうのホンジュンヒョンとそっくりな男が「今すぐ明かりを消して煙が全部なくなる前に逃げろ」と叫んだ。

アンドロイドガーディアンが展示場の真ん中で燃やしているのは新エネルギーで凝縮された人々の記憶だった。 床に落ちた焼け残った記憶たちをよく見た。

愛する人に告白した記憶 犬と海辺を散歩した記憶 友人と初めて一緒に旅行した記憶

小さいけれど大切な思い出だった。このような記憶は挫折に簡単に崩れない支えであり、希望だった。 アンドロイドガーディアンは希望を燃やしていた。他人の希望を燃やしてその煙に酔っていた。怒りが込み上げてきた。

その時ソンファヒョンが叫んだ。

「ヨサンがいない!」

07 SEONGHWA

ヨサンがいなくなったことにパニックになった僕らはがむしゃらにロビーへ走っていった。幸いにも反対側の展示場にヨサンが同じタイミングで走ってきた。安堵で向かい側の展示場へ向かうと自分の後ろを見回していたヨサンが僕らに光っている何かを投げた。クローマーだった。

やっと家に帰れるという喜びも束の間、ヨサンの後にアンドロイドガーディアンが溢れ出てきた。一番デカい奴がヨサンの首を掴んだ。クローマーを渡さなければヨサンの首をへし折ると言い、ヨサンの首をつかんで持ち上げた。方法が他になかった。クローマーを持ったホンジュンがヨサンに近づこうとするとアンドロイドガーディアンは「来ないで、クローマーを投げろ」と命令した。

「絶対に渡すな!クローマーも奪われたら僕らも捕まるから!」ヨサンが叫んだ。 最悪の状況だった。クローマーを渡さなければヨサンが危険だ。クローマーを渡せば僕らみんなが捕まる。 僕ら7人のためにヨサンを犠牲にすることはできない。どの選択をするべきなのか。

ホンジュンも同じ考えをしているようで、僕らとヨサンを交互に見た。心に決めたようにホンジュンは言った。

「ヨサンを僕らの真ん中まで送ってくれるならクローマーを投げてやる」と。

08 YEOSANG

この美術館の中でアンドロイドガーディアンはまた簡単に僕らを捕らえるだろう。それなら僕を救ってクローマーも手に入れる方法は?…ない。あっちこっちに彼らがいるから。全部僕のせいだ。僕がもう少し気をつけていたら、いや、最初に、初めから僕と出会っていなければ、倉庫から追い出されみんなバラバラにならなかっただろう。そしてこんなおかしな所で今のように危険にさらされることもなかっただろう。

そんな考えをしている間に、いつの間にかメンバー達とガーディアンの真ん中に立っていた。アンドロイドガーディアンはホンジュンにクローマーを投げろと叫んだ。僕は口がカラカラになった。ホンジュンの手に持っているクローマーを見た。

クローマー。僕らがあの砂時計について分かったことが何かあったっけ。ふとそんな考えが浮かんだ。そうしてある考えで止まった。 ギャンブルだけど他に方法はなかった。

ホンジュンがアンドロイドガーディアンに向かってクローマーを投げた。 クローマーは大きな放物線を描きながら飛んでいった。僕は素早く前方へ走ってクローマーを引っ掴かみ、メンバーたちが驚いている間にクローマーを奪い返した。慌てたアンドロイドガーディアンたちが僕を捕まえに追ってきた。 その瞬間僕はクローマーを床に叩きつけた。砂時計のガラスが割れ、砂があっちこっちに飛び散った。ホンジュンが連れて行かれる僕の手を掴もうとした瞬間、ピカッと光った。

OUTRO

「1、2、3、4、5、6………7」 夜明けの重い空気の中に震えるサンの声が響いた。

気がついた時、僕らは全てが最初にここを離れた時のままの倉庫にいた。

サンは「7」という数字が信じられなかった。気を取り直そうと溢れる涙を袖で拭いた。僕らは何も言えなかった。ただお互いの顔を確認するだけだった。

「僕、ジョンホ、ウヨン、ミンギ、ユノ、ソンファヒョン、ホンジュンヒョン……」サンは頭を強く振ってからもう一度確認して自分の頬を叩き、またもう一度数えてみて、そのように何度も繰り返した。その声に涙声が混ざり、いつの間にか言葉を押し潰し、啜り泣きだけが残った。 みんなの顔に冷たい絶望の光が浮かんだ。

「ヨサンはどうなったんだ?まさかあの黒い海賊団のように…」ウヨンはその後の言葉に詰まった。物寂しい風だけが泣き声に代わり、誰もその質問に答えなかった。

ソファーにもたれたまま倒れていたホンジュンが立ち上がった。ホンジュンは終始強く握っていた拳をみんなが見えるようにした。鋭いガラスの破片と僅かな砂に赤い血が混じっていた。 ホンジュンは手のひらをゆっくりとひっくり返した。欠けた破片が下へ、下へ落ちていった。

「(倉庫を)離れてはダメだったんだ。最初から去らなければ何もなかったはずなのに……」 重い空気が倉庫の中に停滞し、流れることが出来ずにいると ドンッ!ドンッ!と古い鉄の扉を叩く音がした。 強張った顔でホンジュンが扉を開けた。誰もいなかった。

その時扉に何かがぶつかって下に落ちた。

「これ…ヨサンのドローンだ。」 「誰が操縦したんだ?」

ホンジュンはドローンについた土を払い落とし、倉庫のタンスの上に優しく置いた。そして開いた扉から見える街の光を見つめた。

彼らは強く感じていた。ヨサンは生きている。

*1:변수:直訳は’変数’ですが、’ある状況を変えさせる影響を及ぼす要素’の意味が近いため以降予想外の出来事と訳します。